毎日をここちよく過ごすためには、こころも体も健康でありたいもの。 汚れもストレスも日々洗い流して毎日をここちよく過ごすための ‘そうじとこころの回復力(レジリエンス)‘ について心療内科医の海原純子先生に伺いました。 |
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◆ プロフィール ◆ 海原 純子 (うみはら じゅんこ) <医学博士・エッセイスト・歌手> 東京慈恵会医科大学卒業
医学博士・心療内科医・産業医 日本医科大学・特任教授 ハーバード大学・客員研究員(2008年-2010年) |
ストレッサーの量とストレスの関係 ところでストレスについては多くの方が誤解していることがある。それはストレッサーの量とストレスの関係だ。つまりストレッサー(ストレスの要因になる出来事)が多ければ多いほど、それに比例してストレスが多くなり心や体がダメージをうけてしまう、と思いこんでいる方が多いのである。ストレッサー、たとえば経済状況の変化や、家庭での人間関係の変化、仕事上の失敗がたくさんあればあるほどストレスもそれと比例して大きく膨れ上がりなり、ダメージが大きくなりそうな感じがするのであろう。 しかしこれは誤解にすぎない。むろん大変なストレッサーに出会うと一時的にダメージをうけるものだが、その後次第に回復する。くただしその回復の程度や回復の速度は様々だ。一時的な不調をきたしても立ち直る人がいれば、同じストレッサーでも不調が深刻な人もいる。問題はストレス要因の多さではなく、それを受ける人の回復力なのである。 |
レジリエンス(回復力)とは何か? 近年、レジリエンス(回復力)という視点が注目されており、これはストレッサーによりダメージをうけても立ち直る力のことで、現在レジリエンスの指標が様々な方法で研究されている。「ストレッサーが多くても回復するにはどうすればいいか」きっとみなさんも関心があるのではないだろうか。 これまでで、はっきりしていることはいくつかある。 たとえば、性格傾向で「いい人」はストレスリスクが高くなる。いい人、というのは、本当はいやだなあ、と思いながらも自分の気持をおさえ一人でかかえこんでいる人である。気持を表現せず心の中にためこんでいることで次第にうつ状態に陥ってしまうのである。 また「単一長時間労働」もリスクが高い。同じ姿勢で一日中デスクワーク、パソコン使用、仕事が終るとぐったりで帰って寝るだけ、という人は要注意である。 ひとつの失敗やイヤなことが頭からはなれず寝る前もそれを思い出して寝つけない、というように「こだわり思考」からのがれられない場合も要注意だ。
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レジリエンス(回復力)を高めるために身体を動かそう ではこのようにストレスリスクが高い場合、どうすればレジリエンスを高め回復を可能にできるのだろうか。 いい人に「いい人をやめなさい」と言ったところでそう簡単にはかわれない。単一長時間の勤務をかえるのも難しいし、どうしても失敗やイヤなことが頭にうかんでしまう人に「それを考えるのをやめなさい」と言っても出来なくて逆にどうしてやめられないかと悩んでしまうものだ。 しかし、ちょっとした行動でレジリエンスを高めることは不可能ではない。身体にもう少し注目してみよう。私がおすすめするのは、頭や神経と身体のバランスをとることだ。いい人も考えすぎる人もいつも頭と神経ばかり使っていて身体を使っていない。もっと身体を動かしてみよう。身体は表現の場であり、身体をのばすと心ものびのびするのである。 |
部屋がきれいになるにつれて心の中もそうじができていく 最もてっとり早くできるのは今、座っているデスクの上を整理し、そうじしてきれいにすることだ。不要な書類を捨てたり、シュレッダーにかけデスクをふく体を動かしきれいにすることだけに目を向けているといやなことが心から消えていく。薄汚れていたデスクの上がぴかぴかになると気分はすっきりする。使ったコーヒーカップを洗ってみる。汚れが落ちていくにつれて何となく気分が上向きになるはずだ。 私自身は何となくやる気が出なくてもやもやしている時には、部屋のそうじをする。そうじ機をかけた後、部屋の隅や窓ガラスをふきはじめると次第にそうじに集中して雑念が消えていくのがわかる。人は今していることが人生のすべてである、というのは本当だなあ、と思う。部屋がきれいになるにつれて心の中もそうじができていくのは多分、そうじに集中することで無心になるからだろう。 昔、禅の高僧が台所仕事をしているので若い僧がかわろう、としたところ、自分はこれをするのが修行のひとつだ、といって台所仕事を続けたという話をきいたことがある。そのことに集中することが心を無にする修行になるのだろう。 |
そうじと心の関係 -汚れもストレスも日々洗い流して心地よく さてそうじをして周囲がきれいになる時、心を洗い流しているというイメージをしてみたらどうだろう。一日一回、身の回りにある何かをそうじする習慣をつける。そうじする間身体を動かし、思考を手放し、心も洗い流すイメージをする。その日の汚れをとるのと同じようにその日のイヤなこともさっぱりと心から洗い流そう。 汚れもストレスもためなければ大丈夫。その日の心の汚れを日々洗い流して心地良く翌朝をむかえたいものである。 |